ようこそ欧州麦酒CAFEへ

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−セゾンⅡ− グラス4 シェフ矢嶋の憂鬱

カフェの厨房を預かるシェフ矢嶋は、こだわりの料理人だ。学生時代、バックパッカーでヨーロッパ中を回り、皿洗いをしながら各国の味を習 得した。おかげでこの店の料理はなかなかの評判である。 が、店長阿倍に言わせると、語りだした […]

ーセゾンⅡー グラス3 オルヴァルの奇跡

本日のお奨めは、”オルヴァル”というベルギーのトラピストビールでございます。 トラスピトビールとは、世界の修道院でもわずか7箇所だけが醸造を許されている特別なビールで、その歴史は古く11世紀にまでさかのぼります。 濃厚で […]

ーセゾンⅡー グラス2 店長阿倍の憂鬱

カフェのオーナー兼店長の阿倍は、ある男性客が気になっていた。 この数ヶ月、決まって水曜日に現れるその男、いつもブランド物に身を包み、連れの女性もそのつど顔ぶれが違う。その日の相手は女子大生だった。 自他共に認める遊び人の […]

ーセゾンⅡー グラス1 絶体絶命21世紀ヴァージョン

<当店は、ドイツ・ベルギーなどヨーロッパの美味しいビールと家庭料理が評判の、ちょっとこじゃれたカフェバーでございます> その日、窓際のテーブルに陣取った3人の若い男女。 気弱そうなメガネの男を挟むようにして、二人の女がに […]

グラス11 欲望の昼下がり<後編> エピローグ

相変わらずカフェの男たちは美女に目がない。 その日。 彼女たちが入ってくると彼らの目は釘付けとなった。 店長安倍「久々にいい女だな、しかもナイスバディだ」 シェフ八嶋「それも3人ですよ、目移りしちゃうなぁ」 片桐主任と目 […]

グラス11 欲望の昼下がり<前編> デザートはBb(BETSUBARA)

相変わらずカフェの男たちは美女に目がない。 その日。 彼女たちが入ってくると彼らの目は釘付けとなった。 店長安倍「久々にいい女だな、しかもナイスバディだ」 シェフ八嶋「それも3人ですよ、目移りしちゃうなぁ」 片桐主任と目 […]

グラス10 御曹司店長の野望

「安倍店長と片桐主任て付き合い長いんですか?」 カフェの閉店後、お皿を厨房まで運びながら、思い切って私は片桐主任に聞いてみた。 珍しくご機嫌のようで鼻歌交じりに伝票を集計していたからだ。 主任はレジから引き出した伝票をぐ […]

グラス9 マダムたちの午後

プロローグ 「コーチ、私のことなら気にしないでください。私のせいでご迷惑をかけるようなことになったら申し訳なくて・・・私はいつでも身を引く覚悟ですから」 「あなたが心配することじゃない。僕がふがいないばかりにかえってすみ […]

グラス8 女主任登場

「本日よりうちの経理を担当することになった、本社経理課主任の片桐若葉君だ。よろしく頼む」 店長安倍の紹介を受け、傍らの女性はにこりともせず頭を下げた。 ウエーブのかかった髪はセミロングで、きりっとした顔立ちに黒いふちのメ […]

グラス7 若きシェフの憂鬱

<フロッケンベーカリー>は欧州ビールカフェと同じ通り沿いに立つ、人気のパン屋さんだ。 シェフ八嶋がいち早くその味の良さに目をつけ、以来食パンやバケットを始め、数々のパンがカフェのランチメニューに欠かせないアイテムとなって […]

グラス6 女優の涙

「ねえ城戸ちゃん、今入ってきた人さぁ、如月(きさらぎ)みゆきだよねぇ」 「ええ、間違いないと思います。予約の電話を頂いたときもきさらぎ様って名乗られていましたから。でもまさかあの大女優の如月みゆきだなんてびっくりしちゃい […]

グラス5 紅海の宝石

午前十時半。 欧州麦酒カフェ開店の三十分前、いつものように入店すると珍しく店長阿倍が出勤していた。シェフの八嶋と厨房でなにやら真剣に話し込んでいる。 「おはようございます、店長、シェフ」 「おい、城戸。お前も考えろ」 顔 […]

グラス4 女友達 パート1

金曜日の昼下がり。 遅めにとったランチの後も、二人の主婦はおしゃべりに夢中だ。店内は比較的空いている。店ほぼ中央にある丸いテーブルをはさみかなり大きな声で話している。嫌でも会話はカウンター内の私に届いていた。 二人は昔こ […]

グラス3 ロマンスアゲイン

岩田老人は開店以来のお得意様だ。 愛犬ホップとピルスの散歩の途中、ときどき寄ってくださる。 十年近く前、退職を機に奥様とのヨーロッパ旅行で訪れたベルギーで、初めて本場のビールに出会って以来、お二人ともその味にほれ込んでし […]

グラス2 就職祝い

その日。 カウンターに陣取った一組のカップル。 仕立ての良いスーツをかっちりと着こなした、キャリア風の彼女(たぶん彼より五、六歳上)が注文したのは二人分のシメイブルー。ベルギービールだ。 まずは彼のグラスに注いでやり、そ […]

グラス1 リザーブド

春。 夕闇の訪いは、つれない恋人のように日増しに遅くなる。 やっと暗くなりかけた頃には、店の中はほぼ満席に近くなっていた。 ランチタイムの陽気であわただしい雰囲気とは異なり、この時間の店内は、落ち着いていて、ビールを飲む […]