ピルスナービールの誕生
現在、世界中で最も飲まれているビールは、ピルスナー及びピルスナーの流れにより生まれたスタイルのビールと言えます。
日本でも一般に飲まれているビールもその部類に属しています。
そんなピルスナービールの生まれは1840年代、チェコのピルゼンでした。
ドイツの醸造家がドイツでのラガースタイル酵母(下面醗酵酵母)をピルゼンに持ち込み、ピルスナービールの原形を創り出しました。
ピルゼンの淡色系麦芽や軟水が酵母と相性が良く、シャープな味わいとなりピルスナービールは人気急上昇でした。
腐敗リスクを減らすために高アルコールにしたり、ホップを大量投入するタイプが当時の一般的な水タイルでしたが、低温発酵と低温熟成のピルスナービールは、穏やかな口当たりで何杯でも飲み続けられるビールとして、一般化していきました。
その後ピルスナーはドイツに里帰りし、ジャーマンピルスナーとして進化した結果、元祖のチェコピルスナーはボヘミアンピルスナーと呼ばれるようになりました。
ジャーマンピルスナーはその後、ドイツの各都市によって微妙に変化し、ドルトムンダーやミュンヘナーヘレスといったスタイルを分化させていきました。
ヴィエナスタイルの誕生
ピルスナーの流れを知る上でもうひとつ重要なことで、オーストリアの醸造家が生み出したヴィエナのレシピがドイツミュンヘンにあるシュパーテン醸造所に贈られ、以後ジャーマンスタイルメルツェンという流れがあります。
メルツェンは3月をを表す単語で、同時に3月に仕込まれたビールを意味します。1830年代当時は冷蔵施設が現在のように存在せず、4月下旬から9月末までビール醸造ができませんでした。そのため3月に仕込むビールは長期保存がきく高アルコールを仕込んでいました。
ドイツで9月から10月に行われるオクトーバーフェストは、新酒を仕込むためにビール樽を空にする必要があったため、メルツェンを飲み干す祭りでもありました。そのためオクトーバーフェストスタイルビールはメルツェンと同じ物として扱われておりました。
その後、ミュンヘンのオクトーバーフェスト会場で出展されるビールは時代と共にライト化されコンテンポラリーオクトーバーフェストビールとなり、現在はドルトムンダーと同じスタイルビールに変化します。このことからも、ピルスナービールの一般化が大きく関係していった流れでもあります。
ピルスナーそれぞれの特徴
- ジャーマンピルスナー
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- 透明感のある淡い黄金色で、泡は純白できめ細かい
- ハラタウなどドイツ原産種のホップの上品な香りがあるが、強すぎない。
- モルトの香りはわずかに感じる程度
- フルーティな香りやバタースコッチを思わせるダイアセチルはない。
- ドイツ北部のピルスナーはホップの苦味が強く、南部は弱い傾向にある。
- ボヘミアンピルスナー
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- 透明感がある黄金色からやや濃いめの黄金色で、泡は純白できめ細かい
- ザーツなどチェコ原産種のホップの上品な香りと食パンやビスケットを思わせるモルトの香りに加え、デコクション・マッシングによって生まれる甘味を帯びた香ばしさが特徴。
- 適度なダイアセチル(バタースコッチおような香り)は許容されている。
- ヴィエナ
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- 銅色から赤みを帯びた茶色。
- 軽くローストされたモルト由来の香ばしい香りと甘味をわずかに感じることができる。
- ノーブルホップの香りが漂うが、強くはない。
- 苦味は弱い。
- フルーティな香りやダイアセチルは強い。
- メルツェン/トラディショナルスタイルオクトーバーフェスト
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- 薄い黄金色から赤みを帯びた茶色。
- モルトの香りはパンやビスケットを思わせ、中程度の甘味がある。
- ホップの香りは弱い。苦味は弱いものから中程度のものまである。
- コンテンポラリー・オクトーバーフェスト
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- クリアーな麦わら色から黄金色。
- 甘味のあるモルト感はあるものの低いレベル。
- ホップの香りと苦味は弱い。
- ドルトムンダーとほぼ同じと考えられている。
- フレンスブルガー
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- 黄金色でクリア
- ホップの苦味が非常に強い。
- ドルトムンダー
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- 麦わら色から濃い黄金色
- モルトの甘味は低い。
- ノーブルホップの香りはあるものの弱く、苦味は中程度。
- ヘレス
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- 薄い黄金色
- 食パンの白い部分や軽くトーストしたようなモルトの香りを感じるものもある。
- ノーブルなホップの香りが微かに漂うが苦味は弱い。